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2012年1月25日 (水)

平成24年2月度 『 丹羽経済塾 例会 』 の御案内を申し上げます。

丹羽経済塾の皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
毎回のご出席有難うございます。
平成24年の2月度は下記の要領で行いますので、よろしくお願いいたします。


   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

                               記


日 時   :  2月12日(日) 17:30~ 19:30(受付17:15)


テーマ   :  丹羽の新正統派ケインズ体系に組み込まれた市場メカニズムの役割


参加費  :  2千円( 学生は無料 : 受付でお申し出ください)             


会 場 : 四谷区民センター 11F 第4集会室
      東京都新宿区内藤町 87  電話 03-3351-3314  
      
http://shinjuku-kuminhall.com/pc/event_yotsuya.html
          (ホームページは区民ホール)
      地図  
http://shinjuku-kuminhall.com/pc/pdf/yotsuya_map2.pdf


地下鉄・丸の内線「 新宿御苑 」 駅 、「 2番出口 」 を出て左へ、四ッ谷方向に向かって徒歩5分。
地下鉄・丸の内線 「 四谷三丁目 」 駅 、「 1番出口 」 を出て左へ、新宿駅方向に向かって徒歩10分。
JR新宿駅をご利用の場合 : 伊勢丹を通り越し、四谷方面に向かうと当該建物があります。

出席を希望される方は下記にお知らせください。

  栗原茂男宛 Mail  
kulihala@sepia.ocn.ne.jp;
               FAX   03-3714-3622
                  携帯   090-7218-5584

平成24年2月度 『 丹羽経済塾 例会 』 の御案内を申し上げます。

丹羽経済塾の皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
毎回のご出席有難うございます。
平成24年の2月度は下記の要領で行いますので、よろしくお願いいたします。


   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

                               記


日 時   :  2月12日(日) 17:30~ 19:30(受付17:15)


テーマ   :  丹羽の新正統派ケインズ体系に組み込まれた市場メカニズムの役割


参加費  :  2千円( 学生は無料 : 受付でお申し出ください)             


会 場 : 四谷区民センター 11F 第4集会室
      東京都新宿区内藤町 87  電話 03-3351-3314  
       http://shinjuku-kuminhall.com/pc/event_yotsuya.html
          (ホームページは区民ホール)
      地図  http://shinjuku-kuminhall.com/pc/pdf/yotsuya_map2.pdf


地下鉄・丸の内線「 新宿御苑 」 駅 、「 2番出口 」 を出て左へ、四ッ谷方向に向かって徒歩5分。
地下鉄・丸の内線 「 四谷三丁目 」 駅 、「 1番出口 」 を出て左へ、新宿駅方向に向かって徒歩10分。
JR新宿駅をご利用の場合 : 伊勢丹を通り越し、四谷方面に向かうと当該建物があります。

出席を希望される方は下記にお知らせください。

  栗原茂男宛 Mail   kulihala@sepia.ocn.ne.jp;
               FAX   03-3714-3622
                  携帯   090-7218-5584

2012年1月23日 (月)

富のもと 加工貿易 だけなのか?

福郷初子でございます。
昨年の日本の貿易収支は、赤字となる見込みです。

31年ぶり「貿易赤字国」=震災で輸出入に変調-11年(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012012100154&j4


貿易赤字になったのは、地震等災害の影響はあるでしょうが、それだけが原因ではないようです。また、為替の要因も指摘されていますが、円安になれば全て良しとは限りません。
31年ぶりのことですから、短期的要因だけでなく長期的な要因も考えてみる良い機会だと思います。例えば、輸入品目のうちエネルギー資源が高い割合を占めていることからも、エネルギー問題は重要です。

さて、貿易赤字国となったことで「加工貿易」の存在感が薄くなる中、経団連はTPP参加や消費税増税を呼びかけています。

自民党大会で経団連会長にやじ TPP推進訴えで(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120122/biz12012211150001-n1.htm


自民党の現時点の方針として、TPP参加については態度保留、消費税増税については条件付き賛成だそうです。TPP参加については、内容が不明な段階での態度保留であり、順当に思えます。消費税増税については、大手マスコミが発言の一部のみを取り上げて、全面賛成のように報道しているそうです。
したがって、上記ニュースのようにヤジが飛んでも、おかしなことではありません。

2011年2月28日付記事「消費税増税による経済への影響(6)」にあるように、経団連のTPP参加や消費税増税の呼びかけは、輸出型企業の利益追求のためと考えられます。
これまでの政策は、主たる目的でない場合があるにしろ、輸出型企業が優遇されてきたように思えます。貿易赤字国化を一つの節目と捉え、輸出型企業優遇策を継続するのが果たして良いのか、議論が起こることを期待します。

              福郷初子
               【純日本人会】 http://www.junnihon.com/
                                           http://jun-nihonjinkai.blog.eonet.jp/

2012年1月12日 (木)

韓流で デモあり、次は 中流か

福郷初子(ふくごう・はつこ、ペンネーム)でございます。
本年が復興の年になりますことをお祈りします。

年明け早々、ニュースもいろいろありますが、奇妙な記事を見つけました。

「中国料理を食べ、中国男性に嫁ぐ」 日本人女性に流行? =中国(サーチナ)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0106&f=national_0106_025.shtml


取って付けたような記事に感じますが、私は韓流のことが頭に浮かびました。韓流デモがあったから、今度は中国人富裕層(中流?)ブームでも起こす計画かな、と思いました。しかし、中流ブームが大手メディアでキャンペーンされれば、婚活キャンペーンであおられた一部の日本の女子は、すんなりと嫁いでしまうのかもしれません。
韓流は少数の芸能人が対象ですが、中国人富裕層となれば人数も結構多く、日本人同士の家庭は減少する可能性があります。

一方、東京で電車に乗っていると中国語を耳にすることがしばしばあり、中国人の日本流入が増えていることを感じます。統計によると、外国人登録している在日中国人は、関東南部に集中しているとのこと。
中国出身で日本に不法滞在している人の中に、強制送還できない人がいる、という指摘があります。一人っ子政策の中国で、第二子以降に生まれた子(黒孩子:ヘイハイツ)は中国国籍が無いため、送還する国が無いという論理なのです。
下記リンク先の動画はその指摘の前段です。

International Premium 12/13 ダイジェスト版 中国は人身売買を辞めろ!!(YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=ptDGnQ11TFk


私は、中国出身の方が経営する日本の会社に、少しの期間ですが勤めたことがあります。そのため、中国人に対するアレルギーはありませんし、特に嫌いだとも思いません。
しかし、強引に中流ブームを作ったり、不法滞在に関する問題を隠すのは、良くないと思います。少子化対策を考えているのかもしれませんが、「こっそり」政策は歓迎しません。

このようなトピックを追っていると、先日話題になった下記のニュースは、あるいは国の政策を見越してのことかも知れない、と憶測してしまいます。労働者の移動が多くなれば、仲介業者の関与する場も増えるからです。TPPの事前協議も予定されていますし。

リクルート、欧米の人材派遣事業会社2社を約314億円で買収(財経新聞)
http://www.zaikei.co.jp/article/20120104/91320.html


中国出身の方が経営する会社に勤めていた時、雑談で「日本人は(品質に関して)神経質だ」と言われたのが印象に残っています。日本は戦後、「安かろう悪かろう」から「安かろう良かろう」へと品質改善を実践し、高度成長を達成した経緯があります。
民族の移動・変動は、起こるのが急激であれば、Made in Japanに影響が出てくるでしょう。日本の特質を守っていけるよう、適切な政策を望みます。

              福郷初子
               【純日本人会】 http://www.junnihon.com/
                                           http://jun-nihonjinkai.blog.eonet.jp/

2012年1月 8日 (日)

バーチャルな話        A.A.

財政規律の回復と強化
昨年の大きな出来事は、原発事故を伴った東日本大震災とヨーロッパの金融・経済の混乱ということで異論はなかろう。そして今年は主要国で政治的指導者の交代や改選があり、こちらも人々の大きな関心を集めると思われる。しかし冒頭に取上げた昨年の二つの出来事は、今年も引続きこれに劣らず注目されるはずである。

たしかに政治的指導者の交代は大きなイベントであり、当然、そのうち本誌でも取上げることになる。しかし年頭にあたり本誌はやはり昨年からの課題からまず話を始めたい。


筆者は、これらの問題を正しく理解し、有効な処方箋を得るには11/11/14(第686号)「物事の本質」や11/11/21(第687号)「避けられる根本問題」で述べたように物事の本質や根本を考える必要があると主張してきた。ところが現実の社会では、本質や根本を軽視した議論がまかり通っている。

本来、物事の本質や根本を考え冷静な意見を表明すべき学者や有識者でさえも、多くは世間に流れる「空気」みたいなものに支配されている。とても「低線量の放射線の本当の危険性」や「膨大に膨らんだ世界の金融資産の経済への影響」といった根本的な事柄から議論を始めようという気がない。マスコミやそれに影響を受ける世間は、それらには既に結論が出ていて、議論の余地はないという雰囲気である。


後者についてもう少し述べる。ユーロ圏のソブリンリスク問題は、ギリシヤの財政粉飾の発覚に端を発しているが、根本的にはバブル経済崩壊の後遺症である。世界的な金余りが起り、その一部がEUに流れバブルを生成し、今日、それが崩壊したのである。

金融資産というが経済学上では貯蓄であり、つまり金融資産の膨張とは過剰貯蓄の発生である。貯蓄は設備投資などの実物投資に回っている間は問題はないのだが、過剰となってそれ以外の不動産や商品、そして国債などの債券購入に向かったのである。これらの投資対象物が実際の価値以上に買い上げられバブルが生成された。今日のEU諸国の金融・経済危機はこのバブル経済の崩壊が原因となっている。


筆者はEUの財政危機問題と経済問題の解決は困難と今のところ考える。これはEUの首脳陣の考えが完全に間違えているからである。今日、EUはドイツ主導で財政危機を克服するため「財政規律の回復と強化」に走り始めた。彼等は依然として過剰貯蓄が残されていることを完全に無視している。バブル崩壊後のデフレ経済下で増税と歳出カットを行えばどうなるか見物と筆者は思っている。

筆者は、欧州中央銀行(ECB)がユーロ加盟国の国債をどんどん買えば済む話と考えている。また共同債を発行しこれをECBが買上げ財源を捻出する方法もある。しかしそのような事を行えば「ハイパーインフレ」になると言ってドイツなどから猛反発が起るであろう。


おそらく残された手段は、ユーロの大幅な切下げであろうと筆者は見ている。実際、市場では昨年年末からユーロの下落がまた始まった。「財政規律の回復と強化」を本当に進めれたならば、欧州社会の混乱はもっと大きくなりユーロはさらに売り込まれると考える。筆者はユーロの下値のメドについて見当がつかない(1ユーロ70~80円ということも有りうる)。

世間には世界の経済の中心は既にアジアに移っていて、EUの金融・経済の混乱の影響は軽微という意見がある。しかしユーロの大幅な下落の影響は、世界中に波及し、おそらくこれが各国の通貨安競争を招くと思われる。増税による財政再建を進めようという日本の「円」は一番のターゲットとなりうる。財政再建政策を実行することは、ユーロについてはユーロ安要因、そして日本円に対しては円高要因になると筆者は見ている。


日本では、連日、民主党政権の「税と社会保障の一体改革」という話が話題になっている。増税を行って財政規律を回復しようという動きである。まさにドイツ主導で欧州が進めようとしているのと同じ政策である。

しかし不思議なことに日本の財政がどの程度悪いのかと言った根本の議論がほとんどなされない。政府の総債務残高がいつも問題にされているが、本当は総債務残高から政府が持っている膨大な外貨準備などの金融資産や公的年金の積立額を差引いたところの純債務額が問題のはずである。さらに10/1/25(第600号)「日本の財政構造」で取上げたように、日本の場合、日銀による国債の買い切りオペの残高もこれから差引く必要がある。筆者は、05/5/23(第390号)「ヴァーチャルなもの(その2)」で述べたように、日本政府の債務問題は「バーチャルなもの」の一つと考える。



バーチャルという言葉
しかしバーチャルなものだからと言って、これらを軽視しても良いという話ではない。歴史を振返ってみると、むしろ日本も世界もずっとこのバーチャルなものに振り回されてきた。日本も過去にバーチャルで虚構のようなスローガンに引張られ、大戦にのめり込んでいった。ところが戦後も物事の本質や根本を考えることを止め、「バーチャルなもの」を掲げこれを実現する事こそ「正義」と思い込む大バカ者が次々と現れる。彼等はよく「ネバーギブアップ」と唱える。

「バーチャルなもの」だったはずのものが稀に実現することがある。ロシアの共産主義革命や中国の文化大革命もその例ということになろう。しかし元々「バーチャルなもの」で虚構なのだか永続・発展するわけがない。人々の大きな犠牲を伴いながら、そのような体制は崩壊してきた。日本政府の債務問題も「バーチャルなもの」であり、これに対する財政再建運動が始まってから人々の不幸が大きくなり、むしろ日本の財政は悪くなった。


「バーチャルなもの」に取付かれやすい人がいる。物事を論理的、あるいは合理的に考えない人々に多い。彼等は科学性が欠落した思考を行い、また考えが元々論理的でないからどれだけ間違いを指摘されてもめげない。昔習った古い財政学の教科書が全てと思い込んでいる人々もその一種である。

彼等は日本の財政状態を世界中で最悪と決め付けるが、日本の国債の利回りが世界最低という事実については目をつぶる。また財政状態がそれほど酷い国の通貨が買われるはずがないのに、今年の日本経済のリスク要因の一つが円高懸念となっている。しかし彼等はその事については聞かないふりをする。また彼等は為替介入で誤魔化しておけば良いと目論んでいる。実際、昨年は7~8兆円もの為替介入を行った日もあった。おそらく増税が実現する可能性が高くなるにつれ、前段で述べたように円高圧力は強まるものと筆者は見ている。


今日、日本の財政についての考え方で三つのグループに別れる。まず筆者達のように日本の財政には大きな問題はないという者は少数派であるが一つのグループといえる。我々は政府紙幣の発行という手段があり、またそれが無理としても日銀が国債を買えば良いと考える。

後の二つのグループは本当に日本の財政が悪いと思い込んでいる。一つのグループは純粋に財政再建には大きな増税が必要と考えている。おそらく20~30%の消費税増税が必要と思っている。もう一つのグループは小さな政府を指向するグループであり、彼等は増税ではなく歳出のカットで財政を再建することを主張している。特にこのグループは、公務員の給与カットと議員の定数削減を唱えて増税派を牽制している。給与カットと議員の定数削減ぐらいではたいした歳出カットにはならないが、両者は空中戦を始めている。


筆者は、冷静な議論よりバーチャルなスローガンの方が強くて、人々により浸透しやすいことに注目する。増税派は、とにかく日本の財政が悪いことを強調しキャンペーンを行っている。もう一つの小さな政府を指向する構造改革派は、このデフレ経済でも安泰な公務員の存在をクローズアップし一般の人々を刺激する。たしかに両者の主張はともに単純で分りやすい。

筆者が、日本政府の巨額の債務残高は巨額の日本の過剰貯蓄の裏返しと話してもなかなか理解してもらえない。また過剰貯蓄によって大きな有効需要の不足が発生したため、これまで日本政府が財政赤字を増やし、また今日の円高を招くほど外需依存を大きくしてきたと説明しても頷く人は少数である。総じて筆者達の話はまどろっこしいのである。


前述のように、人間の歴史なんてずっとバーチャルな思考や行動で形作られてきたのではないかと思われるほどである。たしかに天動説が否定され、そのことが人々に浸透したのもそんなに昔の話ではない。いまだにダーウィンの進化論を否定する人々が米国には多数いる。また「鯨は賢いのだから喰ってはいけない(牛や豚、そして鰯はバカだから喰っても良いらしい)」という非科学的な話が欧米ではまかり通っている。

このようにバーチャルな事の方が虚構ではなく、こちらこそ「真実」と思い込んでいる人々の方が圧倒的に多いのかもしれないと筆者はこの頃思う。そう言えばバーチャル(virtual)という言葉自体が不思議で深い。「虚像の」という意味がある一方で、「事実上の」とか「実質上の」と全く逆の意味がある。




来週は今週号でも触れた過剰貯蓄を取上げる。



                    A.A.
                   ― 経済コラムマガジン12/1/9(692号)より転載 
                    http://www.adpweb.com/eco/index.html

バーチャルな話        A.A.

財政規律の回復と強化
昨年の大きな出来事は、原発事故を伴った東日本大震災とヨーロッパの金融・経済の混乱ということで異論はなかろう。そして今年は主要国で政治的指導者の交代や改選があり、こちらも人々の大きな関心を集めると思われる。しかし冒頭に取上げた昨年の二つの出来事は、今年も引続きこれに劣らず注目されるはずである。

たしかに政治的指導者の交代は大きなイベントであり、当然、そのうち本誌でも取上げることになる。しかし年頭にあたり本誌はやはり昨年からの課題からまず話を始めたい。


筆者は、これらの問題を正しく理解し、有効な処方箋を得るには11/11/14(第686号)「物事の本質」や11/11/21(第687号)「避けられる根本問題」で述べたように物事の本質や根本を考える必要があると主張してきた。ところが現実の社会では、本質や根本を軽視した議論がまかり通っている。

本来、物事の本質や根本を考え冷静な意見を表明すべき学者や有識者でさえも、多くは世間に流れる「空気」みたいなものに支配されている。とても「低線量の放射線の本当の危険性」や「膨大に膨らんだ世界の金融資産の経済への影響」といった根本的な事柄から議論を始めようという気がない。マスコミやそれに影響を受ける世間は、それらには既に結論が出ていて、議論の余地はないという雰囲気である。


後者についてもう少し述べる。ユーロ圏のソブリンリスク問題は、ギリシヤの財政粉飾の発覚に端を発しているが、根本的にはバブル経済崩壊の後遺症である。世界的な金余りが起り、その一部がEUに流れバブルを生成し、今日、それが崩壊したのである。

金融資産というが経済学上では貯蓄であり、つまり金融資産の膨張とは過剰貯蓄の発生である。貯蓄は設備投資などの実物投資に回っている間は問題はないのだが、過剰となってそれ以外の不動産や商品、そして国債などの債券購入に向かったのである。これらの投資対象物が実際の価値以上に買い上げられバブルが生成された。今日のEU諸国の金融・経済危機はこのバブル経済の崩壊が原因となっている。


筆者はEUの財政危機問題と経済問題の解決は困難と今のところ考える。これはEUの首脳陣の考えが完全に間違えているからである。今日、EUはドイツ主導で財政危機を克服するため「財政規律の回復と強化」に走り始めた。彼等は依然として過剰貯蓄が残されていることを完全に無視している。バブル崩壊後のデフレ経済下で増税と歳出カットを行えばどうなるか見物と筆者は思っている。

筆者は、欧州中央銀行(ECB)がユーロ加盟国の国債をどんどん買えば済む話と考えている。また共同債を発行しこれをECBが買上げ財源を捻出する方法もある。しかしそのような事を行えば「ハイパーインフレ」になると言ってドイツなどから猛反発が起るであろう。


おそらく残された手段は、ユーロの大幅な切下げであろうと筆者は見ている。実際、市場では昨年年末からユーロの下落がまた始まった。「財政規律の回復と強化」を本当に進めれたならば、欧州社会の混乱はもっと大きくなりユーロはさらに売り込まれると考える。筆者はユーロの下値のメドについて見当がつかない(1ユーロ70~80円ということも有りうる)。

世間には世界の経済の中心は既にアジアに移っていて、EUの金融・経済の混乱の影響は軽微という意見がある。しかしユーロの大幅な下落の影響は、世界中に波及し、おそらくこれが各国の通貨安競争を招くと思われる。増税による財政再建を進めようという日本の「円」は一番のターゲットとなりうる。財政再建政策を実行することは、ユーロについてはユーロ安要因、そして日本円に対しては円高要因になると筆者は見ている。


日本では、連日、民主党政権の「税と社会保障の一体改革」という話が話題になっている。増税を行って財政規律を回復しようという動きである。まさにドイツ主導で欧州が進めようとしているのと同じ政策である。

しかし不思議なことに日本の財政がどの程度悪いのかと言った根本の議論がほとんどなされない。政府の総債務残高がいつも問題にされているが、本当は総債務残高から政府が持っている膨大な外貨準備などの金融資産や公的年金の積立額を差引いたところの純債務額が問題のはずである。さらに10/1/25(第600号)「日本の財政構造」で取上げたように、日本の場合、日銀による国債の買い切りオペの残高もこれから差引く必要がある。筆者は、05/5/23(第390号)「ヴァーチャルなもの(その2)」で述べたように、日本政府の債務問題は「バーチャルなもの」の一つと考える。



バーチャルという言葉
しかしバーチャルなものだからと言って、これらを軽視しても良いという話ではない。歴史を振返ってみると、むしろ日本も世界もずっとこのバーチャルなものに振り回されてきた。日本も過去にバーチャルで虚構のようなスローガンに引張られ、大戦にのめり込んでいった。ところが戦後も物事の本質や根本を考えることを止め、「バーチャルなもの」を掲げこれを実現する事こそ「正義」と思い込む大バカ者が次々と現れる。彼等はよく「ネバーギブアップ」と唱える。

「バーチャルなもの」だったはずのものが稀に実現することがある。ロシアの共産主義革命や中国の文化大革命もその例ということになろう。しかし元々「バーチャルなもの」で虚構なのだか永続・発展するわけがない。人々の大きな犠牲を伴いながら、そのような体制は崩壊してきた。日本政府の債務問題も「バーチャルなもの」であり、これに対する財政再建運動が始まってから人々の不幸が大きくなり、むしろ日本の財政は悪くなった。


「バーチャルなもの」に取付かれやすい人がいる。物事を論理的、あるいは合理的に考えない人々に多い。彼等は科学性が欠落した思考を行い、また考えが元々論理的でないからどれだけ間違いを指摘されてもめげない。昔習った古い財政学の教科書が全てと思い込んでいる人々もその一種である。

彼等は日本の財政状態を世界中で最悪と決め付けるが、日本の国債の利回りが世界最低という事実については目をつぶる。また財政状態がそれほど酷い国の通貨が買われるはずがないのに、今年の日本経済のリスク要因の一つが円高懸念となっている。しかし彼等はその事については聞かないふりをする。また彼等は為替介入で誤魔化しておけば良いと目論んでいる。実際、昨年は7~8兆円もの為替介入を行った日もあった。おそらく増税が実現する可能性が高くなるにつれ、前段で述べたように円高圧力は強まるものと筆者は見ている。


今日、日本の財政についての考え方で三つのグループに別れる。まず筆者達のように日本の財政には大きな問題はないという者は少数派であるが一つのグループといえる。我々は政府紙幣の発行という手段があり、またそれが無理としても日銀が国債を買えば良いと考える。

後の二つのグループは本当に日本の財政が悪いと思い込んでいる。一つのグループは純粋に財政再建には大きな増税が必要と考えている。おそらく20~30%の消費税増税が必要と思っている。もう一つのグループは小さな政府を指向するグループであり、彼等は増税ではなく歳出のカットで財政を再建することを主張している。特にこのグループは、公務員の給与カットと議員の定数削減を唱えて増税派を牽制している。給与カットと議員の定数削減ぐらいではたいした歳出カットにはならないが、両者は空中戦を始めている。


筆者は、冷静な議論よりバーチャルなスローガンの方が強くて、人々により浸透しやすいことに注目する。増税派は、とにかく日本の財政が悪いことを強調しキャンペーンを行っている。もう一つの小さな政府を指向する構造改革派は、このデフレ経済でも安泰な公務員の存在をクローズアップし一般の人々を刺激する。たしかに両者の主張はともに単純で分りやすい。

筆者が、日本政府の巨額の債務残高は巨額の日本の過剰貯蓄の裏返しと話してもなかなか理解してもらえない。また過剰貯蓄によって大きな有効需要の不足が発生したため、これまで日本政府が財政赤字を増やし、また今日の円高を招くほど外需依存を大きくしてきたと説明しても頷く人は少数である。総じて筆者達の話はまどろっこしいのである。


前述のように、人間の歴史なんてずっとバーチャルな思考や行動で形作られてきたのではないかと思われるほどである。たしかに天動説が否定され、そのことが人々に浸透したのもそんなに昔の話ではない。いまだにダーウィンの進化論を否定する人々が米国には多数いる。また「鯨は賢いのだから喰ってはいけない(牛や豚、そして鰯はバカだから喰っても良いらしい)」という非科学的な話が欧米ではまかり通っている。

このようにバーチャルな事の方が虚構ではなく、こちらこそ「真実」と思い込んでいる人々の方が圧倒的に多いのかもしれないと筆者はこの頃思う。そう言えばバーチャル(virtual)という言葉自体が不思議で深い。「虚像の」という意味がある一方で、「事実上の」とか「実質上の」と全く逆の意味がある。




来週は今週号でも触れた過剰貯蓄を取上げる。



                    A.A.
                   ― 経済コラムマガジン12/1/9(692号)より転載 
                    http://www.adpweb.com/eco/index.html

2011年12月25日 (日)

ものづくり 大国、日本 復活よ

福郷初子(ふくごう・はつこ、ペンネーム)でございます。
明るい話題を見つけました。

海外に展開されているパソコンの製造拠点の一部を日本に移転するケースが増えてきたようです。

PC業界のトップ争奪戦 レノボが「日本製」になる可能性(サーチナ)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1220&f=business_1220_037.shtml


レノボはIBMのパソコン部門を2004年に買収した中国資本ブランドですが、買収のニュースは当時、インパクトがあったことを覚えています。それ以前から旧IBMパソコンの大手企業ユーザーは多いようですし、パソコンショップの売り場でも支持の多さがうかがえます。製造業の拠点が中国に移転する例はたくさんありましたが、私には買収劇が「Made in china」を象徴する出来事に映りました。

レノボ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%8E%E3%83%9C


ニュース記事では「日本の人件コストは中国の約4倍」とありますが、そのギャップを超えるものが「Made in Japan」にあると考えます。また、同記事中に「日本は世界で3番目に大きいパソコン市場」とあります。これらの事実は、大手マスコミが事あるごとに主張する「日本は人件費が高いから、工場を海外に移転しないために、給料を下げるしかない」「日本は少子高齢化で市場は縮小傾向だから、経済が停滞するのも仕方ない」とは逆のことを示しています。

上記ニュースはIT産業の一部の出来事に過ぎませんが、流れが変わる兆しであるように思います。コストカットばかりの経営はもう卒業しましょう。「ものづくり大国」日本の復活を期待します。

              福郷初子
               【純日本人会】 http://www.junnihon.com/
                                           http://jun-nihonjinkai.blog.eonet.jp/

2011年12月20日 (火)

外為特会で人民元購入        BY 栗原茂男

日本政府は日本国債を外国人(法人含む)に購入して戴く為の専門職を財務省内に昨年創りました。
今までは日本国債は日本国内で消化されていたので外国からの圧力には無縁でしたが、外人比率が増えるほどに外国からの政策圧力が高まります。

そして今度は中国国債購入です。それに続く大変革を行なうようです。
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ロイター 〔外為マーケットアイ〕中国国債を日本が購入との報道、市場「円相場への影響はほとんどない」
2011年 12月 20日 08:42 JST

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK068943620111219

〔外為マーケットアイ〕
 <08:41> 中国国債を日本が購入との報道、市場「円相場への影響はほとんどない」
 20日付の日本経済新聞は、日本政府が中国政府と通貨・金融をめぐる包括協定を結ぶ検討に入ったと報じた。報道によると、外国為替資金特別会計(外為特会)を通じて人民元建て債券(中国国債)を購入するほか、国際協力銀行(JBIC)が中国側と共同で環境投資ファンドを創設するのが柱で、国債購入は最大100億ドル相当とする案が浮上しているという。
 これについて、JPモルガン・チェース銀行チーフFXストラテジスト、棚瀬順哉氏は「外為特会の資金を利用するのであれば円売りは発生しないため、円相場への影響はほとんどないだろう」と指摘。「購入のために米ドル売り/人民元買いを行なうのであれば、米ドル/人民元の需給に影響を及ぼす可能性もあるが、米ドル/人民元相場は中国当局によって管理されているため、米ドル/人民元相場の方向性に大きな影響を及ぼすこともないだろう」との見方を示した。「日本は外貨準備の中で453億ドルの預金を保有しており、この大部分は米ドル建てとみられることから、中国債を購入するために米国債を売却する必要もないと考えられる。100億ドルという規模は、日本の外貨準備のわずか0.8%に過ぎない」という。
 <08:04> ユーロ1.2997ドル付近、引き続き下値リスク意識
 ユーロ/ドルは1.2997ドル付近。ユーロ圏の財務相は19日、電話会議を開催。終了後に声明を発表し、相対融資の形で国際通貨基金(IMF)に総額1500億ユーロを拠出することで合意したと表明したが、ユーロ買いにはつながらなかった。トレーダーによると、市場は2000億ユーロ拠出を予想していたため、若干失望を誘ったという。
 市場では「急激なユーロ安は一服しているが、戻りも鈍い。欧州問題に対する懸念がくすぶる中で、下値リスクの方が強く意識されている状況に変わりはない」(国内金融機関)との声が出ていた。
 <07:46> きょうの予想レンジはドル77.70─78.30円、実需の売りで上値は限定的か
 
 ドル/円は78.04円付近、ユーロ/ドルは1.2999ドル付近、ユーロ/円は101.41円付近。
 きょうの予想レンジはドル/円は77.70―78.30円、ユーロ/ドルは1.2940―1.3070ドル、ユーロ/円は100.90─102.20円。
 19日のニューヨーク外国為替市場ではユーロが下落。欧州議会で証言したドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が、債務危機に起因するユーロ圏経済へのリスクを強調する一方、ECBの国債買い入れ拡大期待に水を差す発言をしたことが嫌気された。
 このユーロ売り/ドル買いの影響を受け、ドル/円は小じっかり。市場では「リスク回避ではドルと円が選好されやすいが、欧州問題に朝鮮半島情勢の不透明感が加わり、円も決して安全とは言えないとの見方から、ドルに資金が流れている」(国内金融機関)として、「きょうもドルが底堅く推移するだろう」(同)との見方が出ていた。
 もっとも、78円台には輸出企業のドル売りオーダーが目立っており、前日も上値を伸ばしきれなかった。上値は重そうだ。
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資金の出処は外為特会。外国為替特別会計は日本政府が国債を発行し、つまり国が市場から借金をして外国の通貨を購入して来たもの。
目的は円高、円安などで為替が変動した際に調整する手段として政府が外貨を売ったり買ったりする為。

現在の世界で国際間の折引きが行なわれる場合、大半がアメリカドルで支払いが行なわれているので、アメリカドルが世界の基軸通貨と呼ばれています。
ただし法的根拠や条約などはありません。

それを快く思わない国々がドル基軸通貨を崩壊させたがってきました。
仲介侵略主義の中国はその意志が鮮明です。今回の日本政府の方針は中国の工作によると考えるべきかと思います。

現在、アメリカが中心となって対中包網創りを必死で進めています。米中の陣取り合戦と言った感じです。
その中で日本は如何いう立場を執るのかの選択を迫られていますが、沖縄ビジョンの民主党政権は対中従属戦略を選択しています。
今回の報道記事が事実なら中華侵略主義への協力の一環と見るべきかと思います。

勝手にそんな事すんなよ!と言いたいです。

一方中国は大昔から侵略主義で、アジア、アフリカで政変を起こさせ中国の支配下におさめ、やがては先進諸国も乗っ取るというのが毛沢東以来の戦略。
スプラトリー諸島(中国は南沙諸島)を巡ってドンパチやってるフィリピンと「友好」関係を結ぼうとしています。
フィリピン内部への工作が外国の誰もが気が付かないうちに進んでいるのでしょう。

そんな流れの中での今回の報道だと思います。
当初は小額なので全く影響はないのですが、米ドルから人民元に乗り換えると言う事の意味は重大です。



 それから昨日、キム・ジョンイル死亡のニュースが報道されましたが、北朝鮮というのは中国のダミーみたいなところがあって、中国が日本や韓国、アメリカなどの外国に意志表明する時に北朝鮮を出しに使って軍事行動を取らせてきたと思います。それに対し、商売の関係で中国と露骨に喧嘩したくないので北朝鮮を非難するといった構図を私は感じてきました。
つまり北朝鮮は苛められっ子と言うわけです。どうもそんな気がします。
周辺諸国は力の均衡が壊れる朝鮮半島の変化を望んでいませんから、暗殺なんか誰もするわけないし、多分、北朝鮮は当面は今までと変らないと思います。
すんなり後継が決まって、親中の姿勢が強まるくらいかと思います。

それより、日本は一刻も早く事大主義文化から脱して政治を行なう必要があります。


2011年12月18日 (日)

シミュレーションモデルの話        A.A.

米国製の既製品
先週号で小林慶一郎一橋大学教授が論拠としている新古典派一般均衡モデルについて触れた。経済モデルと言っているが、これはシミュレーションモデルと考えて良い。一般人は、シミュレーションモデルは凄い経済学者の経済理論を基に組立てられた数多くの方程式で成立っていて、これに数値を当てはめ高性能のコンピュータを使用し、経済の分析や経済動向の予測に使うと思っている。

したがってシミュレーションモデルによる結果と言われると、正しいのかどうかを別にしてたいていの人々はこれに平伏し一目置く。それを良いことに悪質な経済学者・一般エコノミスト・官庁エコノミストなどは、これを使って誤った世論誘導を行う。それに対抗するには、人々が経済シミュレーションモデルについての知識や情報が必要である。しかしそれは簡単なことではない。


残念ながら筆者も経済シミュレーションについて特別に学んだことはなくそれほど詳しいわけではない。ただ筆者はこれまで聞いてきた範囲の話はできると思う。

主に使われている経済シミュレーションは二つある。一つは小林教授が参照している新古典派一般均衡モデルであり、もう一つはケインズモデル(教授の言うところの旧来のマクロ経済モデル)である。後者のケインズモデルは政策変更に対して家計や企業は行動様式を変えないと仮定し、新古典派一般均衡モデルはそれがマクロ変数(消費、雇用、投資など)に影響を与えるという前提に成立っている(おそらく「期待」というものを取込んでいると思われる)。


人々は経済シミュレーションモデルは、個々の学者やエコノミストが一から組立てていると思っている。ところが日本で使われている経済シミュレーションモデルのほとんどは、米国製の既製品という話である。ただシミュレーションソフトにはオプションがついていて、その国の事情や分析者の思入れをある程度取込める形になっている。筆者は以前あるシミュレーションソフトのフローチャートを見たことがあり、そこには「春闘(なつかしい言葉)の賃金アップ率」なるものが組込まれていた。これも日本の経済事情をオプションを使ってモデルに組込んだのであろう。

ただソフトが既製品であることに問題がある。基本的な部分は使用者が簡単には触ることができず、また触ることによってシステムが暴走することも考えられる。したがって使用者は、簡単なデータを使ったテストランを行ってシミュレーションソフトの動作確認を行うことぐらいしかできない。もっとも学者やエコノミストが独自にシミュレーションソフトを最初から作成しても、他の人が確認するすべがなく経済学界の中で評価されるとは限らない。


筆者は、経済シミュレーションモデルの分析で結果が大きく異なるとしたなら、この原因の大半はどちらの経済モデルを使うかに掛っていると考える。つまり新古典派一般均衡モデルとケインズモデルである。もし学者やエコノミストが良心的なら両方のソフトを使って分析する思われる。

もっとも両モデルを使った場合では、分析結果が大きく異なることが考えられる。たしかにそれでは何を分析結果から主張したいのか分らなくなる恐れはある。ただ小林教授の場合は、一方的に新古典派一般均衡モデルを使った分析結果しか参考にしていないところを見ると、著しく公平性を欠いた研究と言える。

本当は、新古典派一般均衡モデルとケインズモデルのどちらが正しいのかという議論が必要なのであろう。しかし両陣営ともどちらのモデルを使ったのかを明らかにせず論争が行われることがある。これでは両者の議論はいつも「空中戦」に終わる。



学者やエコノミストの一大特徴
小林慶一郎一橋大学教授の文章でおかしいと思われる所を指摘したい。まず前段で取上げたように一方的に新古典派一般均衡モデルを使った結果しか紹介していないところである。旧来のマクロ経済モデルの「旧来」という表現から分るように、明らかにケインズモデルを古くて役立たないモデルという印象を与えている。しかし仮にケインズモデルが間違っていたとしても、新古典派一般均衡モデルが正しいという話にはならない。むしろ新古典派一般均衡モデルがとんでもないものである可能性がある。


本誌は、04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」で小林教授の今回の論説とよく似た話を紹介したことがある。A教授(正しくは大阪大学のB 教授)は「1兆円も財政支出を増やすと、日本でハイパーインフレが起る」というばかげたことを言っていた。おそらくA教授もこの新古典派一般均衡モデルを使っていたのであろう。

小林教授やA教授だけでなく、今日の日本には「財政支出による需要創出は、インフレを起し実質GDPは増えない」と主張する頭がハイパーな学者やエコノミストで溢れている。しかし筆者は、これらの人々はこの米国製の新古典派一般均衡モデルソフトによる分析結果を固く信じているだけと思っている。おそらくこの既製品ソフトにどれだけの信頼性があるのか調べた者はいないのであろう。

新古典派一般均衡モデルソフトを信奉している学者やエコノミストの一大特徴は、現実の経済を見ないことである。またこれが彼等の強みになっている。例えば過去に日本は何十回となく財政支出増大による景気対策を行ってきた。しかし現実の経済を見れば分るように、彼等の言うハイパーインフレが起った事は皆無である。また東日本大震災の復興事業のため、財政支出が増大されているが、これによって日本にハイパーインフレが起る可能性はゼロと考える。


筆者がもう一つ気になったのは、小林教授の言葉使いである。明らかに読者に誤解を与えるよう悪意をもった表現が多い。例えば日銀による国債購入を「財政破綻」と表現している。これは11/1/17(第646号)「永久債の日銀引受け」で紹介したセイニア-リッジ政策を揶揄して「マネタイゼーション」とか「ヘリコプターマネー」と呼ぶより酷い表現である。


また筆者は教授の「インフレ」という言葉の乱発が気になる。ただこれについては、本誌で何回も取上げてきたので多くは語らない。頭が雑な学者やエコノミストは、物価上昇の事をインフレと表現する。しかし物価上昇とインフレは全く異なる概念である。

本来、インフレは通貨の膨張を指すのであり、必ずしも物価上昇を意味しない。実際、日銀が国債買い切りオペを継続していることを見れば明らかに、今日、明らかに日本では通貨膨張政策が実施されている。しかし一向に物価は上昇しないのである。つまりインフレ政策が行われているのに彼等の言うところのインフレ(物価上昇)は全く起っていない。そして最悪の表現は物価上昇率のことをインフレ率と呼ぶことである。


これも新古典派一般均衡モデルが「生産要素(資本・労働)は常に100%使われている」という現実離れした前提で組立てられているからであろう。しかし現実の社会には生産設備の遊休や失業者が存在する。

ところがこのモデルの信奉者達は、遊休化している設備は陳腐化して使い物にならず、失業者は技術が劣り再教育しなければとても職に就けないと思い込んでいる。したがって追加的な財政支出によって需要が少しでも増えれば、直に生産要素の不足が起き、たちまち物価が上昇する(彼等の言うところのインフレ)と決めつける。たしかに彼等の経済シミュレーションモデルではそうなっているのである。




先週、今週のテーマはそのうちまた取上げる。新年は1月9日号からで、今年の経済を振返りたいと思っている。それでは良いお年を迎えて下さい。 。



                    A.A.
                   ― 経済コラムマガジン11/12/19(691号)より転載 
                    
http://www.adpweb.com/eco/index.html

2011年12月12日 (月)

財政破綻のすすめ        A.A.


「財政破綻」というキーワード
今週は、財政破綻にまつわり興味ある文章を読んだのでそれを取上げる。11月7日付日経新聞、経済教室の「財政再建コストを測る」(小林慶一郎一橋大学教授)という論説である。


小林慶一郎氏について、本誌は否定的な論調ではあるが01/3/26(第201号)「銀行の不良債権問題(その1)」を始め何度か取上げたことがある。この学者は、元々は数学者であり、シカゴ大学で経済学を学んでいる。筆者は、まず彼のこの経歴に不快感を感じていた。実際、正直言って「数学界の落ちこぼれの経済学者」「シカゴ大学というカルトの殿堂の出身者」といった先入観でこの学者を見ていた。

筆者は、昔から、経済学が数理経済学に偏重するようになってから経済学の堕落が始まったと思っている。また数学界の落ちこぼれ学者を有り難がっている日本の経済学界を異常と感じていた。また今日数式を解くことが経済学を学ぶことと勘違いする風潮が蔓延している。

経済学が数学を利用するのは分るが、彼等は数式に乗るよう経済現象を過度に単純化したり、非現実的な仮定を用いまた現実離れした前提条件を置いてモデルを構築し分析する。例えば「生産要素(生産設備・労働)は常に100%使われている」といったばかげた仮定を平気で用いたモデルで「財政支出による追加的な需要はハイパーインフレを招くだけ」という、絶対に有り得ない結論を導き出しこれを喧伝している。


彼等は得意の数学を駆使し精緻な分析を行うが、肝心の前提条件がボロボロであるため、現実離れした結果が出る。ところが一頃、ケインズ経済学への反発からか(ソ連の崩壊前後から)、この手の経済学者がノーベル経済学賞を受賞するケースが増え、彼等こそ経済学者の本流と勘違いされた。日本では彼等の一派が長らく「そのうち円や日本国債の暴落が起る」と主張している。ところが現実の経済の動きは全く逆に動いている。

しかし彼等は、現実の方が間違っていると言い訳を捜し回る(多くの場合「国民の金融資産が大きいから破綻の時期が遅れているだけ」と苦しい弁明を行う。これを言い始めてどれだけの歳月が過ぎたのだ。)。自分の経済モデルは正しいが、規制緩和が進んでいない現実経済の方が間違っていると言って逆ギレする新古典派(ニュークラシカル)のエコノミストと似ている。

彼等にとって現実の経済の動きより、自分達のモデルの正統性の方が大事なのであろう。とんでもないこの種の経済学者は、自分達のいい加減なモデルに合うよう社会の方を変えることを主張する。まさに「構造改革派」とは彼等のことである。


前置きが長くなったが、小林教授の文章のポイントを列挙すれば「財政再建と破綻のコストの比較考量が重要」「財政が破綻するとインフレや銀行危機誘発」「政府による外貨資産購入で将来の円安防げ」となる。ただし最後の「外貨資産購入うんぬん」の話は省略する。


小林教授は、財政の持続可能性の観点から必要な増税、特に消費税の増税率を提示している。これには何人かの経済学者の新古典派一般均衡モデルを使った研究を紹介し、これらを参考に財政持続のために日本は30~35%の消費税が必要になると結論付けている。また消費税増税がいやならそれに相当する財政支出の削減が必要になると述べている。ここまではよく聞く話であり目新しさはない。

ところが小林教授の今回の話で面白いところは、「今日の政治状況を見ても分るように、このような増税や財政支出の削減は無理」と判断しているところである。つまり彼は日本の財政が持続困難であり破綻に向かうと言うのである。そしてこの「財政破綻」という言葉こそまさにキーワードである。本誌が初めて小林慶一郎氏という経済学者を取上げて10年が過ぎたが、随分と現実的になったものと筆者は感心した。筆者もこれしかないと思っている。



経済厚生上のコストの比較
小林教授の文章で次に重要な概念は「経済厚生上のコスト」というものである。具体的には増税、または財政破綻が及ぼす国民経済への悪影響といったものである。教授は増税・財政支出削減による「経済厚生上のコスト」は新古典派一般均衡モデルで算出できるとしている。

これによると30~35%の消費税で国民の消費が1.5%減るのと同じと述べている。たったそれくらいと思われるが、新古典派一般均衡モデルの精度についてはあまり突っ込みたくない。おそらく何かの間違いであろう。


ここで小林教授の文章で最重要なキーワードである「財政破綻」の説明をする。教授は、増税や財政支出削減は無理であり、結果的に足らない財源は国債を発行し、これを中央銀行(日銀)が買入れる他はないと結論付けている。そしてこの中央銀行が国債を買う事態をまさに「財政破綻」と定義している。

つまり何てことはなく筆者達が主張しているセーニアリッジ政策を「財政破綻」と呼んでいるだけである。おそらく日銀による国債買入れだけでなく政府紙幣発行も「財政破綻」と言うのであろう。しかし日銀による国債買入れは毎月行われていることであり、日銀の国債保有残高は70兆円程度あると推定される。つまり日本は既に教授の言うところの「財政破綻」状態がずっと続いていると言える。


しかし一方の「財政破綻」(中央銀行による国債買入れ)の「経済厚生上のコスト」を測る計量モデルがないことを教授は指摘する。そして「財政再建(増税や財政支出削減による)と破綻のコストの比較考量が重要」と一つの結論を出している。

そしてもう一つの結論が「財政が破綻するとインフレや銀行危機誘発」ということである。ここでいう銀行危機誘発とは、中央銀行による国債買入れによって大幅なインフレが起り国債価格が下がり、つまり国債価格の暴落によって銀行の経営が危機に陥るという話である。


ここから小林教授の文章の中で明らかに事実と違う点を指摘する。まず「中央銀行による国債買入れによって大幅なインフレが起る」という箇所である。今日の日本のように大きなデフレギャップが存在する場合、中央銀行の国債買入れによる追加的な需要増(財政支出の増加)があっても簡単には物価上昇は起らない。さらに今日の消費の構成は、需要が増えることによってむしろ価格が下がる物の割合が大きくなっている(電化製品や通信関連消費など)。

実際、日本で日銀が国債の買い切りオペを始めてからそれが原因で物価が上昇したという話は聞かない。むしろ財政支出を増加させるため、もっと大胆に国債を発行し日銀がそれを買入れるべきと筆者達は言っているのだ。またもちろん筆者達は、無制限に日銀の国債購入や政府紙幣の発行をしろと言っているのではない。国民が容認できる物価上昇の範囲内のセーニアリッジ政策である。

また「中央銀行による国債買入れによる大幅なインフレが国債の暴落を招き、国債を保有している銀行の経営を危機に陥らせる」という表現がまことに奇妙と言いたい。中央銀行が国債を買入れるのに、なぜ国債価格が暴落するのか明らかに矛盾している。極端な話、発行している国債の全てを買い切っても良いのである。


ただ文章の全体を通して面白いという部分がある(もっともそれがないのなら本誌でわざわざ取上げることはない)。前述のように「財政破綻」の「経済厚生上のコスト」を測る計量モデルがないことを教授が指摘している点である。小林教授は財政再建(増税や財政支出削減による)と「財政破綻」(中央銀行による国債買入れ)の経済厚生上のコストを測り、より厚生上のコストの小さい政策を選択すべきと述べている。

まさにこれこそ筆者が日頃主張していることである。セーニアリッジ政策によって有効需要が増え物価が上昇する可能性はあるが、これによってGDPが増え国民所得が増え消費が増える。一方、増税(消費税増税)や財政支出削減という財政再建政策なら確実に物価が上昇するが実質国民所得は減少する。両方とも同じ物価上昇が起ると想定されるが、筆者は明らかにセーニアリッジ政策(教授の言う財政破綻)の方が厚生上のコストは小さい(むしろコストはマイナスと思われる)と考える。

そして小林教授には是非ともこの研究を進めてもらいたい。ただ新古典派一般均衡モデルを使うのはやめてもらいたいものである。他にもっとましなモデルがあるであろう。




来週は、今年の最後で、今週の続きと今年の経済を振返る。



                    A.A.
                   ― 経済コラムマガジン11/12/12(690号)より転載 
                    
http://www.adpweb.com/eco/index.html